出版社:みすず書房
ゲイリー・ウィンシップ・編・筒井亮太・訳
2023年8月18日 ISBN:9784622096306
〈精神分析家は自分の松明の火を灯しつづける点には長けているが、その火の暖かさを部外者に提供する点にはそこまで長けていない。分析家たちを隠れ家から引きずり出したり、周囲の人たちが分析家に助けを求めるように促したりするのは、多くの場合、外的な事件の圧力のためであった〉 英国独立派を代表する心理療法家、ジョナサン・ペダー。彼は本邦でも広くその著書が読まれ受容されてきたウィニコット、バリント、ボウルビィらのアイデアを独自にブレンドしつつ、伝統にとらわれずに治療論を磨いてきた。本書に収録された論文を通読すれば、ペダーが面接室内では解釈だけでなく、素朴で人間的な接触も重視していることが理解されるだろう。 一方で、ペダーは指導者であり、教育者であった。英国最大のメンタルヘルス専門家養成機関であるモーズレイ病院でコンサルタント心理療法家を務めただけでなく、1970年代に心理療法家の認定プロセスを導入した先駆的組織「ラグビー会議」のメンバーとしても活躍したのである。 ペダーが本書終盤で投げかける問いは、今後も後進によって繰り返し提起されるのではないだろうか――心理療法家は、どのようにして精神医学に影響を与えることができるのか? 20世紀における英国精神分析の普及と発展を支えつづけた心理療法家が遺した、唯一の論文集。 9784622096306
第1章 心理療法、演劇、劇場において空間と位置が果たす役割
第2章 アタッチメントと新規蒔き直し
第3章 哀しめないこととメランコリー
第4章 治療関係における依存恐怖
第5章 終結、再考
第6章 スーパーヴィジョンの理論と実践を振り返って
第7章 英国の国民保健サービスにおける心理療法の略史
第8章 道──精神分析療法を受けやすくすること